ユゴー『レ・ミゼラブル』

<概要>

『レ・ミゼラブル』はフランスの作家ヴィクトル・ユゴーVictor Marie Hugo(1802-1885)によって、1862年に出版されました。

題名となっている、「レ・ミゼラブル(Les Misérables)」というフランス語は、「悲惨な人々、憐れな人々」を意味します。

ユゴーは1845年からこの作品の執筆を始め、約20年近い歳月をかけて完成させました。

人道主義者でもあったユゴーは、革命に参加したり、政治家としても活動していました。しかし弾圧の対象となり、19年に及ぶ亡命生活を送っています。

『レ・ミゼラブル』が出版された当時はベルギーにて亡命生活を送っている最中でした。

超大作となったこの作品は、出版されると大きな反響を呼び、出版数日で完売・売り切れとなってしまったと言われています。

ユゴーがこの作品を手がけた理由を諸説ありますが、この作品を通して当時のフランスの社会の状況や、「哀れな人々」の実情についての問題提起を行っています。

 

『レ・ミゼラブル』は出版された当時から現代まで多くの人の心を捉え、幾度となく映画化されており、ミュージカルはイギリスやアメリカ、日本でも公演が続けられています。

日本の翻訳書では、どの出版社でも4〜5巻に及ぶ、長編小説です。

 

<あらすじ>

ジャン・ヴァルジャンは、貧困のためたった一つのパンを盗んでしまったがために19年もの間服役をしていた。19年に及ぶ刑務所での生活で、彼は希望も夢も失い、何も信じることができなくなっていた。

刑務所から出所しても罪人であることがすぐにわかり、冷遇される。たどり着いた司教の家で、ミリエル司祭と出会うことで、彼の人生は大きく変わることになる。

 

<感想>

まず、読破するのに大変時間がかかった作品です。

しかし時間をかけて読破するだけの価値はある作品だと感じました。

ストーリーはややドラマッティックな感じはありますが、これだけの作品ですのでドラマティックでなければ読み進められないと思います。笑

作品の中には様々な「哀れな人」が登場します。

作品を通しての主人公はジャン・ヴァルジャンですが、どの登場人物も主人公です。

ユゴーがスポットを当てたのは、貧困に苦しむ子供や女性たちです。

ユゴーはこの作品の中で、「社会の状態を正しく把握するためには、子供や女性に目を向けること」というような趣旨の文章を書いています。

歴史など公の情報で表に出てくるのは輝かしい功績をたたえた人や、成功した人たちです。

他の人たちにはスポットライトも当たらなければ、見向きもされません。

目を背けたくなる現実に向き合わなければならない。

そう言われているような気がしました。

 

また作品中に何度もジャン・ヴァルジャンが自問自答し、逡巡する姿が出てきます。

遠藤周作の『沈黙』でも書かせていただいたのですが、この自問自答する姿が私は心を打たれました。

『レ・ミゼラブル』もキリスト教的世界観で書かれた作品ですが、

正しく生きること、信念に背かないこと、というのがいかに難しく、苦難の道かということを教えてくれています。

また、正しく生きることが苦難の道ではあるけれども、必ず救われれる、ということも書かれていると思います。

宗教的な考えなどは関係なく、何かを信じること、何かを無条件で愛することは同じことなんだと感じました。

芯のある信念がある人、愛するものがある人は強い、と言いますが、

正しくそれが描かれている作品です。

 

お時間はかかりますが、映画やミュージカルだけでなく、是非とも原作を読んでいただきたいと感じている作品です。